5th Aug, 2013 Posted by 田中浩也


スピーカー9 トーマス・ディエズ(Tomas Diez) -FabLabと住宅・建築・都市

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トーマス・ディエズは、ベネズエラ生まれの若き建築家。現在は、スペイン・バルセロナのiAAC (カタルーニャ先端建築大学院大学)の教員をしながら、ファブラボ・バルセロナを切り盛りしています。

 

バルセロナは、10年前からファブラボの活動をしている、世界でも最古参のひとつです。建築系のラボということもあって、大型のものをつくることで知られ(ラボ自体も、もとは造船所だった巨大な倉庫を借りています)、2010年には実験住宅、「Solar Fab House (http://www.fablabhouse.com/en/)」を発表、世界を驚かせました。

 

 

この住宅は、太陽光パネルで自家発電したり、分解・組み立てができてどこへでも運搬できたり、Shopbotという機械さえあれば住民自身で「修理」や「拡張」ができたりなど、デジタルファブリケーションが住宅や建築にもたらす様々なアイディアが濃縮されたものでした。現在も実用化に向けて、Fab House II, IIIの設計と建設がどんどん進められ、洗練されてきています。


しかし彼らの活躍は、それだけに留まるものではありませんでした。

 

2011年ペルーのリマでの世界ファブラボ会議には、バルセロナ市長が参加。そしてその年、ファブラボ・バルセロナはシティ・アーキテクトに任命され、まち全体を手掛け始めることになります。現在の計画では、来年までに市内に6~8箇所のタイプの異なる「ファブラボ」を設立するといいます。ひとつの「区」にひとつのラボ、というくらいの粒度なのです。その彼らのファブ・シティーのキーコンセプトは「PITO (Product In, Trash Out) :製品を輸入して、ゴミを捨てる」からの”脱却”であり、21世紀型の「DIDO (Data In, Data Out)」:データを輸入して、データを輸出する。地産地消の新しい持続的な都市モデルなのでした。

 

ただ、これからの都市を考えるにあたって、ハードの建築だけではものたりません。わたしたちはIT環境を常にまとった暮らしを既に日常としています。そこで彼らは、物理的な建築設計だけではなく、電子工作においても卓越した技術を磨いています(異分野が融合するのがファブラボですから)。「電子装置(特にセンサ)をたくさん”まち”にインストールすることも、ソフトの意味で重要な都市デザインである」と常に言っており、そうしたカリキュラムも学校自体に取り入れられているのです。

 

 

先日発表した「スマート・シティズン・スターター・キット」(http://makezine.com/2013/06/15/the-smart-citizen-kit-open-environmental-monitoring-platform/)は、市民ひとりひとりが自らの周りの環境を測定して、そのデータをサーバに集約することで、まち全体のエネルギーの消費量や、環境の動態を「見える化」するといったものでした。このデバイスはファブラボでつくられ、市民に配られると言います。このようにして、市民の能動的な参加を通して、まち全体の動きが「可視化」されれば、市の側は適切な量のエネルギーを適切な場所にだけ送ったりでき、結果的に、「スマート」な都市マネジメントが可能になります。

 

 

ハードの建築からもソフトのシステムからも新しい都市モデル”Fab City”を目指すトーマスは、来年2014年の第10回世界ファブラボ会議、スペイン・バルセロナでの開催を勝ち取りました。偶然か必然か、今年の開催地である横浜市と、バルセロナ市は、「スマートシティ」政策で協力する覚書を締結していますhttp://www.hamakei.com/headline/7811/。今年の会議を機に、横浜とバルセロナが「ファブラボ」で繋がるはずです。

 



そして、創造的(クリエィティブ)で、持続的・循環的・親環境的(スマート)な新しい都市モデルを世界に先駆けてつくっていくパートナーとして、これからも一緒に仕事ができればと思っています。

 



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